脳科学者・茂木健一郎が語る屋久島の魅力
#自然への回帰と調和
「日本が世界に誇る九州の世界遺産・屋久島。海、山、川、そのどれもが訪れる旅人を楽しませています。私たちは大自然の島に暮らす人々や文化にスポットを当て、動画でお届けしています。」
「自分自身が自分に働きかけて治すみたいな力が、こういうところ(森の中)では高まっていく。人間の体の細胞の中では1日に何個かがん細胞のようなものができてしまうってことは、これは仕方がないことなんだってことが最近判ってきてるんですね。やっぱりある程度の確率でがん細胞みたいなものが出てくるんだけど、それを攻撃して壊してしまうのは我々の免疫系なわけです。ということは、我々の免疫系ってのはそういう力を持っている。ところが、ストレスとかがあると、そういう免疫系の働きが妨げられてしまう。会社で忙しいだとか文明の中でいろいろ、適応しなくちゃいけないとか学校に行かなくちゃいけないとかね。」
お話:茂木健一郎
制作:屋久島放送局
自然の中の癒し
僕が子どもの時からこういう自然の中にいてやっぱり一番感じたのは、癒されるってことですよね。これほんとにそうなんです。
我々、文明つくって人工的な空間の中で生きてて、アイフォンだ、アイパッドだ、アンドロイドだとかWiiだとか、DSだとかを使っています。これらは電気が使えて、せいぜいこの100年ぐらいですよ。でも我々の脳が進化してきた圧倒的な長い歴史っていうのは、こういう森の中なんですよ。ということは我々の脳はこういう森とかそういう自然に適応するように本当はできている。
人間の自己治癒力
だから、こういうところに戻ってくると本来の深いところから引き出される本能みたいなものが出てくるわけなんですね。それはやっぱり、傷ついたり苦しんだりしている人にとっては癒される、治っていく、より健康になるプロセスではどうしても必要なことである。基本的にですね、脳の研究してますと、人間には自己治癒能力があるってことが非常によくわかるんですね。
どうしても近代医学っていうのは薬を使ったり手術をしたりします。それはそれで必要なことなんですけれども、我々の中には自分で自分を治す力があるんです。これはもう、脳の研究でも、例えばプラシーボ効果っていって砂糖の塊を薬だよって言ってあげると効いてしまうという脳活動が見えているわけです。前頭葉に向かうある回路が、活動して自分で自分を治しちゃうんです。
ということは、砂糖の塊をあげてそれが薬だと思って効いちゃうってことは、治したのは誰か?砂糖の塊じゃないんですよ、自分なんです。要するに脳は自分でかなり治せるんです。
自己治癒力を高める
ところが今どうしても都会に行くと、ちょっと調子が悪くなると、お医者さんに行きましょう、あとなんかしましょうって、どんどんどんどん自分っていうものが弱くなっていくんです。ただ、こういう自然の中に来ると基本的に自分しか頼るものないですから、そういう自分自身が自分に働きかけて治すみたいな力が、こういうところでは高まっていく。
人間の体の細胞の中では1日に何個かがん細胞のようなものができてしまうってことは、これは仕方がないことなんだってことが最近判ってきてるんですね。やっぱりある程度の確率でがん細胞みたいなものが出てくるんだけど、それを攻撃して壊してしまうのは我々の免疫系なわけです。
ということは、我々の免疫系ってのはそういう力を持っている。ところが、ストレスとかがあると、そういう免疫系の働きが妨げられてしまう。会社で忙しいだとか文明の中でいろいろ、適応しなくちゃいけないとか学校に行かなくちゃいけないとかね。学校に行っても、偏差値でお前は偏差値低いとか言われるとか。こういうストレスがあると免疫系の活動が落ちる。
くつろぐという文化
ですからね、もともと、脳の中にある自己治癒能力っていうのを引き出す為には、ストレスがまず、あまりないところ、そしてなんていうかな、安らぐところ、調和があるところ、そういうところに身を置くことが必要なんですよね。
それはゆっくりしたプロセスなんですよね。勿論、一日二日来てもそれなりの効果はあると思うんですけど、本当に深いところから自分が変わっていく為には、ある程度の時間をそこで過ごさなくちゃいけないので、僕はやっぱりこういう屋久島みたいなところで自然に接しながら、みんながね、ゆっくり過ごすというような文化が根付くことが、とても大事なことなんだろうなと思います。