脳科学者・茂木健一郎が語る屋久島の魅力
#森から学ぶ「共生」
「日本が世界に誇る九州の世界遺産・屋久島。海、山、川、そのどれもが訪れる旅人を楽しませています。私たちは大自然の島に暮らす人々や文化にスポットを当て、動画でお届けしています。」
「この森の中には、様々なニッチ、『生きる場所』があって、その様々なニッチに応じていろいろな生き物がいる。 ひとつの生き物だけ取ると、あることは得意なんだけど、別のことは苦手。また別のところだと、別のことが得意で、他のことは苦手な生き物がいる。それがお互いに自分の得意な場所で生きている。そして世代を交代させている。そう考えると、我々人間の社会でもね、ある人は何かが得意で、何かが苦手なんだけども、それでいいんじゃないかと思えてくるんですよね。」
お話:茂木健一郎
制作:屋久島放送局
人間の在り様
これだなー。よしっ。うわぁ、ほんと、でも透明な、きれいな水!
では、ちょっと飲んでみます。
おーっ!おいしい、っていうか、あ、甘い。いやー、これはうまいわ。いや、これ飲むだけでも来た甲斐があった。ねぇ、この自然が作ってくれた水ですよ、これ。おいしいー。
あー、なんか生き返った気持ちになりますね。
今、こうやって、屋久島の森、奥深くに入ってきてるんですけども、奥に入れば入るほど、心がとても安らいで、落着いて、本来の、心の有りようってものを取り戻していくように思うんです。やっぱり、我々、人間ってのは、普段、都会の中の文明で、かなり無理して生きてるんじゃないかないうことを感じます。
様々な「生きる場所」
それから、自然の中にはですね、様々な生き物がいる。この生き物の多様性も、学んだことのひとつではないかと思います。この森ん中には、様々なニッチ、「生きる場所」があって、その様々なニッチに応じていろいろな生き物がいるんですよね。
ひとつの生き物だけ取ると、あることは得意なんだけど、別のことは苦手。また別のところだと、別のことが得意で、他のことは苦手な生き物がいる。それがお互いに自分の得意な場所で生きている。そして世代を交代させている。そう考えると、我々人間の社会でもね、ある人は何かが得意で、何かが苦手なんだけども、それでいいんじゃないかと思えてくるんですよね。
一人の人が全てのことをやる必要はない。自分の得意なことを自分の得意なニッチで生かせばいいと、そういうことが見えてきます。もう一つはですね、ほんと森の中って、お互いに依存しあって、関係しあってる。どんな生き物も無駄な生き物はいない。どの生き物も一人だけで生きているのではない。ほかの生き物とお互いに支え合って、時には争いながら生きている。
社会の本質
それが森の姿だと思うんですけども、これもやはり、人間の社会が本来あるべき姿だと思うんですよね。どんな人も社会の中で一人で生きているのではない。お互いに支え合って、時には争いながら、しかし最終的には調和を持って生きている。そういう人間の社会でなければいけないなあということを森の中で改めて思います。
このようなことはですね、ほんとは、子どものころから来て、ただ森を見て、ああきれいだなあ、と思うだけじゃなくて、そういう生き物の仕組みを学ぶことによってですね、我々生き物というのはどういう存在なのかということを知り、そしてそれを生かした人類の文明、そして社会のあり方を模索していくっていうことが21世紀の子どもたちにとっては必要なのかなと思います。
あるいはそういうことを忘れて生きてしまっている大人たちにとっては、もう一度そういう生き物としての原点を確認する場所として、この屋久島の森というのは本当に素晴らしい場所だなあと改めて思った次第です。