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脳科学者・茂木健一郎が語る屋久島の魅力 
#生物多様性とチョウ

「日本が世界に誇る九州の世界遺産・屋久島。海、山、川、そのどれもが訪れる旅人を楽しませています。私たちは大自然の島に暮らす人々や文化にスポットを当て、動画でお届けしています。」

「実は、ここ(屋久島)に来る時も、『茂木さん、屋久杉行きますか?』ときかれて、『いや、ぼくは、特にいいです』と答えました。というのは、屋久杉まで歩くのが、屋久杉っていうのは、縄文杉までね、歩くのが嫌なんじゃなくて、さっきから申し上げてる、生き物の多様性ということから見ると、ここら辺で十分おもしろいんですよ。」

お話:茂木健一郎
制作:屋久島放送局


屋久島のチョウ

私、実は、脳科学をやり始めたのは30歳ぐらいの時で、それまでは、物理学をやろうと思ってたんです。物理学をやる前は、何をやろうとしてたかというと、小学校の時はずっとチョウチョの研究をしてたんです。日本鱗翅学会というチョウとか蛾を研究する学会に、小学校ながらに入りまして、研究をしておりました。私の母親は九州ですけど、私は、北海道から九州までずっといろんなフィールドをまわって、チョウを追いかけてたので、屋久島に来ても、まずはチョウチョですね。

みなさん、おそらくご存知なのは、ツマベニチョウかな?イシガケチョウ、イシガキチョウってわかりますか?意外と山の中とかね、種類が少ないんですよ、こういう、人と自然がまざってるところが、環境としても豊かで、虫の種類が多かったりするんですよね。

いたねぇ。こいつは、成虫で冬眠する、冬越すんです。ここに、ウラギンシジミがいました。これ、素人はなかなか気づかないと思うんですけどね。我々は、一発でわかります。これがチョウチョです。

ほら。動くかな?あっ!飛んだ!

ふふっ(笑)。ごめんね、寝てたところ起こしちゃったな。反応早かったね、今ね。

 

奥深い「生物多様性」

屋久島というのは自然遺産に登録されてる、いわゆる、生物の多様性の、ほんとにすばらしい島なんですけども、おそらく、島で普通に生活してる限りにおいて、生物の多様性ってのは、ほとんど、わからないんじゃないかなと思います。

例えばですね、このセンバスの、この森の、生物多様性を把握したいとしたら、昆虫は、どこに何がいて、どの季節にいるのか、植物は何があるのか、それから鳥は何が飛んでるのか、それから哺乳類は何がいるのか、サルとか鹿とかいるかもしれませんよね?その基本データを取るだけでも、難しいってことです。つまりね、屋久島の一番の宝物である、生物多様性ってのはそれぐらい奥が深いということです。

ぼくはね、実は、ここに来る時も、「茂木さん、屋久杉行きますか?」と言われ、「いや、ぼくは、特にいいです」と答えました。というのは、屋久杉まで歩くのが、屋久杉っていうのは、縄文杉までね歩くのが嫌なんじゃなくて、さっきから申し上げてる、生き物の多様性ということから見ると、ここら辺で十分おもしろいんですよ。

ぼくはさっきから行方不明になってて。「どこに行ってたんですか?」と聞かれたけど、すぐ後ろの、もうここから歩いて20メートルぐらいの森の中に入って、それでボーっと見てるだけで、本当におもしろいんです。

 

森が伝えるメッセージ

さっきも言った、イシガキチョウがどう飛んでるかとか、アオスジアゲハはどう飛んでるかとか。生き物というのは、みんな必死で生きてますからね。これが、森に来て、我々が受け止める一番大切なメッセージで、それぞれ一生懸命生きている。

みなさん、だってもう何十年も生きてる方もいらっしゃるでしょう?チョウチョは生まれてからもうせいぜい一週間とかそれぐらいの間に、蜜吸って、オスはメスを見つけて、卵産んで、その間に鳥に食べられないように、すごい忙しいわけですよ。

だから、我々人間の脳って、いろんなメッセージ受け止めるんですけど、自然の中に入って、一生懸命生きるってすばらしいことだなという生命のエネルギーみたいなものというのは、まちがいなく受け止めてるんですね。