脳科学者・茂木健一郎が語る屋久島の魅力
#自然観とツーリズム
「日本が世界に誇る九州の世界遺産・屋久島。海、山、川、そのどれもが訪れる旅人を楽しませています。私たちは大自然の島に暮らす人々や文化にスポットを当て、動画でお届けしています。」
「屋久島にはオンシーズンとオフシーズンがある。これ、本当は生物多様性っていうことを、味わおうという方から見たら、本当はオンもオフもないんですよ。というのは冬には冬の生き物のあり方があるんです。夏には夏の生き方があるんです。だから、冬来てもおもしろいんですよ。ぼく実際、冬にも屋久島来たことがあるんですけど、おもしろいです。」
お話:茂木健一郎
制作:屋久島放送局
屋久島の多様性を味わう
屋久島にはオンシーズンとオフシーズンがある。これ、本当は生物多様性っていうことを、味わおうという方から見たら、本当はオンもオフもないんですよ。
というのは冬には冬の生き物のあり方があるんです。夏には夏の生き方があるんです。だから、冬来てもおもしろいんですよ。ぼく実際、冬にも屋久島来たことがあるんですけど、おもしろいです。
屋久島ツーリズム問題
自然遺産の島ということで、あまり劇的に観光客の数が増え過ぎるってのも、ちょっとどうかなと思っています。たとえば、飛行機の中にいらっしゃった中高年の登山ブームみたいな感じの方々が、恐らくみんな縄文杉のところに行くのかなと思って見ていました。
一極集中みたいなもの、そういうツーリズムのあり方って恐らく屋久島にとっては、必ずしもいいものではないような気がします。
量はもちろん追いかけるべきなんですけど、量とともに質を、やっぱり深めて行くっていう、それがやっぱり屋久島の非常に重要なミッションだと思うんですけども、この質を深めるってこれは文化なんですね。
ネイチャーライティング
イギリスに留学してたことがあるんですけども、イギリスはそれこそ、我々科学者にとっては尊敬する、非常に大御所ですけども「チャールズ・ダーウィン」っていう「種の起源」と言って、要するに生き物が自然の中で、どうやってお互いに、共生し合って種(しゅ)がどんどんこういうふうに分解してきたかってことについて非常に偉大な本を書かれた方がいらっしゃるんです。
このダーウィンが暮らしていたダウン村っていうところの家のまわりには、やっぱりこういう自然があるんです。ダーウィンは生涯、大学の先生にもならず、ダウンハウスっていうところに、温室を造って、庭を造って、それからまわりを歩いて、生き物を観察して「種の起源」を書いたんです。
イギリスはダーウィンもいたし、それから今リチャード・ドーキンスっていうオックスフォード大学の先生が、やっぱり生き物のこといろいろ書いてるんですけど、そういう方々がネイチャーライティングっていうんですかね、自然のことをいろいろ書くっていう文化があるんで、或いはBBCもそういう自然番組作るのが非常に得意なんで、案外そういう文化が息づいているんですよ。
コスタリカのエコツーリズムを学ぶ
そういう方々が例えば、ぼくも行ったことあるんですけどコスタリカみたいなところに行くと、ジャングルの、皆さん、例えば山の方ご覧になると、もう普段からご覧になっていると思うんですけど、ぼくなんかは、あの木の幹のとこに行きたい、幹っていうか樹冠のところに行きたいなって思っちゃうんですよ。わかります?その気持ち。これがわかる人はね、「虫や」なんですよ。
森の下歩いているだけじゃなくて、なんていうか梢のとこに行きたいのよ、俺たち。だからコスタリカなんかは、「樹冠キャノピー」と言うんですけど、そこを、こういう橋みたいので渡ったりとか、そういうツーリズムが盛んに行われているんですね。
コスタリカはそれが非常に大きな観光産業になっているんですけど、それはね、別にぼく、縄文杉を見に行くおじ様おば様方が悪いって言ってるんじゃないんです。そういう一点豪華主義の観光とは違うんですよ。
だから縄文杉だけに光を当てるっていうのは文化的に実は貧しいんです。わかりますよね?
コスタリカはそういうエコツーリズムっていうんですかね、全体を楽しむというツーリズムが盛んに行われていて、文化なんですよ。
ぜひね、屋久島で、ぼくはやるべきだと思っています。
多様性だとか、エコロジーみたいなものを、お題目ではなくて本当にイギリスがたとえばやっているような、或いはコスタリカでエコツーリズムでやっているような形で、細かく見ていくという教育を高めていったら、その一つの、甲子園みたいなところとして屋久島っていうのは人気が出てくると思うんですよ。
せっかく自然の味方をこうやって我々身に付けて来たんだから、屋久島に行ってそれを試してみたいですね。